東大テニス

東大生が実践している、身体能力に劣るプレーヤーでも勝てる方法を解説します

してもいいミス、してはいけないミス

テニスには、してもいいミスと、してはいけないミスがあります。してもいいミスとは、アンラッキーによるミスであり、してはいけないミスは、無謀なショットによるミスのことです。図解すると以下のようになります。

 間違ったショット正しいショット
ミスになった 無謀 アンラッキー
エースになった ラッキー セオリー通り

正しいショットはポイントを取れる確率の高いショットですが、それでも100%ではありません。ミスになってしまうこともあるでしょう。図の右上のゾーンです。しかし、正しいショットを打ったうえでのミスは、してもいいミス、仕方のないミスです。責めるべきではなく、なぐさめるべきでしょう。

逆に、間違ったショットを打っているにも関わらず、ポイントが取れてしまうことがあります。図の左下のゾーンです。ここは麻薬のように危険なゾーンです。ポイントを取れてしまっているのでつい喜びがちですが、確率の低いショットを打っているので続けていると不利になります。このゾーンで喜ぶことなく、逆に戒めなくてはいけません。

最終的に試合で勝つためには、確率の高いショットを打ち続けることが必要です。目先のポイントにこだわるのではなく、ショットの選択にこだわることが、結果的に勝ちに近づくポイントなのです。

勝つための練習のやり方

先輩の言葉に、

練習には3種類ある。質を上げる練習、率を上げる練習、新ショットの習得だ。

というのがありました。プロとアマの違い-総論-でも書いていますが、テニスではミスをしないことが非常に重要ですので、3種類の中でも、率を上げる練習が、一番勝利に結びつきやすい練習と言えるでしょう。

僕はよく「〇%のショット」という表現をしますが、テニスを始めたてで試合に慣れていない人は、100%のショットの練習ばかりして、ミスらずラリーをするために率を重視した60%のショットや、調子のよくない時のための40%のショットの練習を怠ります。どんなに100%のショットが威力のあるものだったとしても、それが勝利に結びつかないことは、試合をしていくとわかってくるのではないでしょうか。

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この話を図解するとこんな感じです。勝つための練習は、右下の緑色の部分。60%のショットの威力を上げたり、40%のショットを身に着けるという練習だと言えるでしょう。

ポジショニングの重要性

どんなスポーツでもポジショニングは大切ですが、卓球はポジショニングがとても極端になりやすいスポーツで、その重要性がわかりやすいです。たとえばこんな動画です。

 


【卓球】45秒のスーパーラリー (水谷隼 VS ヨルゲン・パーソン) - YouTube

 

卓球台はあんなに小さいのに周りのスペースはとても広く、ロブショットを打った後のポジショニングは遠目から見ても一目瞭然です。

簡単に言えば、深いショットを打ったときは自分も下がる、ストレートは空け目にして角度をつけやすいクロスを重点的に守るということになります。

それを踏まえたうえで、テニスの動画です。


61 これまでのビデオテニスレッスン最高のテニスラリーテニスショット - YouTube

回り込んでのフォアハンドが得意ということと、クロスを守ってストレートを空けるというセオリーから、だいぶバック寄りにポジショニングしながらラリーをしていることがわかると思います。

ポジショニングを磨き上げることで、身体能力に頼らずに守備範囲を広げることもできるのです。

フォアハンドストロークの両手打ち

テニスサークルでは、男性が女性にテニスのアドバイスをする際に、相手にとって有効なアドバイスではなく、自分のスキルに基づいたアドバイスをしてしまうことがよくあります。筋力のない女性にフォアハンドストロークを片手打ちで教えてしまうこともその一つです。

男性には気づきづらいことですが、筋力のない女性の場合、片手フォアハンドではラケットの面が安定しないことがあります。特に厚いグリップのとき不安定になるので、安定させるために薄めのグリップになる症状が特徴的です。厚めに持つようにアドバイスしても、面が安定しないし手首も疲れるのでなかなかうまくいきません。イメージしにくい場合は、左手で片手打ちフォアハンドをやってみるといいでしょう。最初は右手と同じように打とうとしますが、すぐに手首が疲れてグリップを薄めに変えてしまうはずです。

このようなケースでは、フォアハンドも両手打ちにしてしまうのが効果的です。両手で持てば面が格段に安定するので、筋力がないうちからテニスを楽しむことができます。

問題は、それを教える側の男性に、両手打ちフォアハンドの経験がないことです。ですが、それを理由に片手打ちを教えていては進歩がありません。フォアとバックで手を入れ替えること、片手の時より打点がうしろになることに気を付けつつ、アドバイスしていきましょう。

もし、カット打法の花巻東・千葉翔太くんがテニス部だったら

スター不在と言われた今回の甲子園で、一番話題になったのが「カット打法」の千葉くんでした。
「見ててつまらない」とか、「高校野球の精神が」とか、「プロじゃ通用しない」とか散々言われてましたが、千葉くんにとって、自分がチームの勝利に貢献することに比べれば、実に些末なことだったでしょう。

 

フィジカルに劣る千葉くんは戦略的に、力と力のぶつかりあいを避け、野球と言うスポーツにまったく新しい勝負を持ち込みました。
従来の勝負の方法しか知らなかった人たちの中には、新しい勝負を認めようとしない人たちも多くいましたが、フィジカル勝負を避けて消耗戦に持ち込むことをこのブログで提唱している僕からすると、非常に共感できます。

 

カット打法は、レベルが低ければ低いほど有効な戦術です。
プロでは通用しないかもしれませんが、高校野球では流行るのではないでしょうか。

最初の記事でも書いていますが、東大のテニスサークルでは、攻めを放棄して守りに徹するロブロブという戦術が浸透していて、言ってみればカット打法が当然の戦術として広く使われています。
きっと千葉くんがテニス部だったら、高校テニスにロブロブを持ち込み、世間を驚かせたのではないでしょうか。

 

しかしロブロブは東大では一般的なため、当然ある程度の対策も取られていて、力強い球を打つだけではなく、ロブロブを打ち破れなければダメだといった風潮も見られます。
きっと高校野球においても、速い球を投げられるピッチャーではなく、カットさせない技術を持ったピッチャーが評価されるようになっていくのでしょう。

 

スポーツですから、フィジカルの強い人が有利なのは当たり前です。
フィジカルトレーニングから目をそらしてはいけません。

しかし、それでも第二、第三の千葉くんが現れることを、今まで見たことがないプレースタイルで、今までの常識をがらっと変えてしまう選手が現れるのを、期待してしまうのです。

テニスにおける時間稼ぎ

ルール上、テニスには時間稼ぎの概念はありませんが、実際の試合になると非常に重要な概念になります。

 

何度も説明してきているとおり、アマでは守る側が圧倒的に有利です。シングルスにおいて、ベースライン後方から打って万全の体制の相手から一発でウィナーを奪うことはまず不可能でしょう。なので、攻めてポイントを取ろうと思ったら、相手が体勢を立て直す時間を奪い、ネットに近いポジションから打ち込んでいかなければなりません。

 

逆に、守る側からすると、時間を稼ぐことで自分の体勢を立て直し、相手の組み立てを寸断してしまえば、やられる可能性は低くなります。そのとき必要になるのが、ボールの遅さと高さと深さです。遅くて山なりのボールを深く返して時間を稼ぐことができれば、フットワークが悪くても持久戦に持ち込めます。

 

アマのレベルであれば、守ってばかりいても勝てるのがテニスです。時間はかかりますし、あまり見た目も良くないですが、勝てば官軍の状況では有効な戦略になります。

スマッシュを打つ素質

スマッシュを打つのに一番必要なのは肩と手首の筋肉で、逆に言うとそれさえあればスキルはあまり必要ありません。つまり、筋トレもせずにスマッシュの練習だけをしていても、あまり上達は望めないと言うことです。もちろん、球出し練習でも多少筋力はつきますし、フットワークの強化や最低限のスキルが必要なこともあるので、無意味ではありませんが。

 

身長が高ければスマッシュに有利と言うのも過大に評価されていて、例えばネット際でのリーチや、スピンロブに対する守備範囲においては高身長が有利となりますが、十分に高いロブをサービスラインあたりから打つなどのケースにおいては、身長よりも筋力のほうが重要です。高身長だが非力なプレーヤーはスマッシュが苦手なケースが多く、逆に低身長でも上半身に力のあるプレーヤーは、スマッシュも安定していることが多いです。

 

部活でいうと、バレー部出身のプレーヤーはフットワークやコースの打ち分けがうまいケースが多い印象を受けます。バドミントン部は大振りになってしまう人が多く、当たれば速いもののミスが多くなりがちです。軟式テニス部は、バックボレーで厚いグリップに慣れているからか、厚めのグリップでコンパクトなスマッシュを打つ人が多く、ミスが少なくなります。